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ネパールのスパイス徹底ガイド:文化・種類・料理・購入方法・健康効果

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ネパール料理は豊富なスパイスを使うことで知られています。インド料理に似ていると思われがちですが、実は独自のスパイス文化が根付いており、日々の食事や健康維持にスパイスが欠かせません。


この記事ではネパールのスパイス文化の概要から代表的なスパイスの種類、料理への活用法、購入方法、そして健康効果までを詳しく解説します。ネパール料理に興味がある方や、自宅でネパール料理を作ってみたい方はぜひ参考にしてみてください。


ネパールのスパイス文化の概要


ネパールではスパイスが単なる調味料にとどまらず、食文化の中心的な役割を果たしています。毎日の家庭料理にスパイスは欠かせない存在で、各家庭ごとにスパイスの調合(マサラ)の工夫があります​。料理の味付けだけでなく、体調を整える伝統的な薬として使われたり、食材の匂い消しに使われたり、肌に塗って美容に役立てることもあります​。例えば、ターメリック(ウコン)は傷口の消毒やスキンケアに、フェヌグリーク(メティ)は消化不良の改善にと、台所にあるスパイスで家庭療法を行う習慣も根付いています​。


ネパールの食文化においてスパイスは、料理に風味を与えるだけでなく食品の保存にも一役買っています。冷蔵庫の普及率が低かったネパールでは、腐敗を防ぐために徹底して火を通して食べる習慣が発達し、抗菌作用のあるスパイスをふんだんに使って食材を長持ちさせてきました​。そのため、生肉や生魚を食べる文化はなく、乳製品でさえ一度加熱してから口にするほど徹底しています​。スパイスたっぷりの料理は高温調理によって安全性を高め、冷蔵保存がなくても日持ちする工夫でもあったのです。


ネパールのスパイス文化は、南隣のインドと北隣のチベット双方の影響を受けつつも独自の発展を遂げました。インド料理と比べると、ネパール料理は油分控えめでマイルドかつヘルシーな仕上がりになるのが特徴です​。乳製品や油を多用した濃厚なカレーよりも、香味野菜やハーブ、基本的なホールスパイスを活かした軽めのカレーやスープが好まれます​。例えばインドではトマトベースでクリーミーなグレービーソースの料理も多いですが、ネパールでは汁気の多いスープ状のダル(豆スープ)や、汁気を飛ばしたドライタイプのタルカリ(おかず)が一般的です​。


また、ネパールではインドほどスパイスのペースト(ミックススパイス)を大量に使わず、生のハーブやシンプルな組み合わせで素材の旨味を引き出す傾向があります​。一方、ヒマラヤを越えたチベットの影響もあり、蒸し餃子のモモや麺料理のトゥクパなど、穏やかな味付けの料理が取り入れられているのもネパール食文化の特徴です​。これらの料理もまた、ネパールでは現地のスパイスによってアレンジされ、独特の風味を持つようになっています。


代表的なスパイスの種類と特徴


ネパール料理で使用されるスパイスの種類は実に多彩で、その数は20~30種類にも及びます​。中でも特によく使われ、ネパール料理の味を語る上で欠かせない代表的なスパイスをいくつか紹介します。それぞれのスパイスが持つ風味や健康効果、ネパールならではの使い方について見ていきましょう。


ターメリック(ベサール)


ターメリックはショウガ科の植物の根を乾燥させて粉末にした鮮やかな黄色いスパイスで、日本ではウコンとしても知られます。ネパール語では「ベサール」と呼ばれ、カレーや炒め物、漬物まで幅広く使われています。抗菌作用や消化促進作用があり、二日酔いや食欲不振の改善、ダイエットや美容にも効果があるとされています​。そのため古来より薬として用いられることもあり、「魔力を持つスパイス」と信じられてきた歴史もあるほどです​。


ネパール料理では下ごしらえの段階で肉や魚にターメリックをまぶして臭みを取ったり、調理中に油で炒めて料理全体にコクと鮮やかな色味を与えたりします。抗炎症・抗酸化作用も強く、アーユルヴェーダでは傷の治療や風邪予防に使われるなど、その健康パワーから「天然の抗生物質」とも称されています​。


クミン(ジラ)


クミンは独特の芳ばしい香りを持つ小さな粒状のスパイスで、ネパール語では「ジラ」と言います。インド料理でもお馴染みですが、ネパール料理でも欠かせない香りの主役です。加熱するとナッツのような濃厚で香ばしい香りが立ち、料理に奥深い風味を与えます。ホール(粒)のまま油で炒めてテンパリングに使ったり、パウダー状にして他のスパイスとブレンドしたりと、使用法も様々です。


クミンには健胃作用や整腸作用があり、胃腸の調子を整えて消化を助けてくれます​。お腹の張りやガスを緩和する効果(駆風・鎮痙作用)も認められ、香りを楽しみながら胃腸ケアもできる一石二鳥のスパイスです​。ネパールではダル(豆スープ)に焦がしニンニクやジラを加えて香り付けする「タルカ」(テンパリング)の工程が一般的で、このひと手間が料理全体の風味を大きく左右します。


コリアンダー(ダニヤ)


コリアンダーはパクチーとも呼ばれるハーブの種子(コリアンダーシード)や葉(シラントロ)を指し、ネパール語では「ダニヤ」と言います。ネパールカレーに欠かせないスパイスの一つであり、カレー粉やガラムマサラの主要構成要素でもあります。


コリアンダーシードはやや甘く柑橘系を思わせる爽やかな香りと僅かな苦味を持ち、他のスパイスとの調和役としてカレーに丸みを与えます​。粉末にして料理に加えるととろみとコクが出て、マイルドな味わいに仕上がるのが特徴です​。一方、コリアンダーの生の葉は料理の仕上げに散らして清涼感をプラスしたり、チャツネ(薬味ソース)にすり潰して用いたりします。


消化促進や食欲増進、利尿作用、発熱時の解熱効果など薬用効果も期待できるスパイスで、胃腸の調子を整えたりむくみを改善したりするのに役立ちます​。ネパールでも古くから民間療法に取り入れられており、「コリアンダーティー」を飲んで体調管理をすることもあります。


チリ(クルサニ)


チリは唐辛子全般を指す言葉ですが、ネパール語では特に唐辛子を「クルサニ」と呼びます。ネパール料理の辛味付けに欠かせないスパイスで、乾燥させた赤唐辛子や粉唐辛子、生の青唐辛子など様々な形で利用されます。唐辛子にはビタミンA・Cが非常に豊富に含まれており、暑い時期の夏バテ防止にも効果的です​。


適度に摂取することで消化促進や血行促進にも役立ち、体を内側から温めてくれます​。ネパールには「アカバレ(通称ダルレ)・クルサニ」と呼ばれる非常に辛い丸型の赤唐辛子があり、アチャール(漬物)や辛味噌的な調味料に使われます。料理では、ホールの赤唐辛子を油で炒めて香り付けしたり、粉末のチリパウダーを加えて辛さの調整をしたりします。


ネパール料理の辛さはインド料理と比べると控えめと言われますが、それでも地方によっては驚くほど大量の唐辛子を使うこともあります。辛味の種類も、生の青唐辛子のフレッシュな辛さから熟成発酵させたアチャールの旨辛さまで多岐にわたり、料理ごとに辛味の使い分けがされているのも特徴です。


フェヌグリーク(メティ)


フェヌグリークは豆科の一年草の種子で、ネパール語名は「メティ」です。少しメープルシロップのような甘い香りとほろ苦さを併せ持つスパイスで、ネパール料理ではスタータースパイス(テンパリング用スパイス)としてよく使われます​。


料理の最初に熱した油にフェヌグリークを入れて炒め、種が黒っぽく色づくまで加熱すると独特の香ばしい香りが立ち上ります​。この香りこそが「ネパールの香り」と表現されるほど、ネパール料理の風味の決め手となります​。焼きあがったメティをそのまま料理に混ぜ込んだり、時には炒めた後に取り出して苦味を抑えたりして風味付けに活用します。


また、メティは野菜や果物のアチャール(漬物)に風味と深みを与えるためにも欠かせません​。一晩水に浸けて発芽させたメティを使う発酵アチャールなど、健康志向の強いメニューにも登場します​。フェヌグリークには消化を助ける効果があり、胃もたれや腹部の膨満感を和らげるのに役立ちます​。


コレステロール値を下げる働きや咳・発熱・下痢への効果もあるとされ、アーユルヴェーダでも必須のスパイスと位置付けられています​。ネパールでも産後の母乳分泌を促すためにメティを入れたスープを飲む習慣があったりと、伝統的な知恵の中で健康目的に使われてきました。


ティムール(ネパール山椒)


ティムールはネパール原産の山椒で、ミカン科サンショウ属のスパイスです。外見や性質が中国の花椒(ホアジャオ)や日本の山椒に似ており、噛むと爽やかな柑橘系の香りと痺れるような刺激が広がります。まさに「ネパールの山椒」という名にふさわしく、その独特な風味はネパール料理の隠し味として重宝されています​。ティムールは主にアチャール(漬物やピクルス)に挽いた粉を振りかけたり、肉・魚料理の下味や仕上げに少量加えたりして使います。例えば、トマトのアチャールにひとつまみのティムールを加えると爽やかな香りとしびれる後味がプラスされ、本場ネパールの味に近づきます。


また、羊肉や水牛肉のカレーに加えると臭み消しになると同時に深みのある風味が出るため、料理人たちにも好まれます。「ネパールっぽい味の決め手」がティムールであると言っても過言ではなく、これを入れるだけで本格的なネパール料理の香りになるほどです​。さらにティムールには健胃作用や抗菌作用も期待され、ネパールでは頭痛や風邪の時に生姜やターメリック、岩塩などと一緒に煎じ茶にして飲む家庭療法もあります​。食卓から民間療法まで幅広く活躍するスパイスであり、最近では日本でも「ネパール山椒」として注目されるようになってきました。


ネパールのスパイスを活かした料理


ネパールでは先述のスパイスを巧みに組み合わせ、シンプルながら奥深い味わいの料理を生み出しています。ここでは、ネパールを代表する料理にスパイスがどのように使われているか、具体的な例を見てみましょう。定番の国民食「ダルバート」や人気料理「モモ」の味付け、そしてネパールカレーとインドカレーの違いについて解説します。


ダルバートに見るスパイスの調合


ダルバート(ダルバート・タルカリ)はネパールの国民食とも言われる定食スタイルの料理で、炊いたお米(バート)と豆のスープ(ダル)、季節の野菜カレー(タルカリ)やおかず、アチャール(漬物)などがワンプレートに盛られます。シンプルな見た目ですが、その中で使われるスパイスの組み合わせは非常に重要です。例えばダル(豆スープ)には、仕上げにクミンシードやフェヌグリーク、にんにく、唐辛子などを熱したギーや油でテンパリングして加える工程があります。


これを現地では「タルカ(タルカリ)」または「チャウン」と呼び、焦がしニンニクとスパイスの香りがダルに移りコクと香ばしさが増します​。高地の地域ではここに香味ハーブのジンブー(ネギ科の野草)も一緒に炒め、ダル独特の豆臭さを和らげる伝統もあります​。ジンブーを入れたダルスープは「わさびの効いていないお寿司は物足りない」のと同じくらい、一味足りないとさえ言われるほどで​、それだけダルバートにおけるスパイスの風味付けは重要なのです。


一方、添えられる野菜のタルカリ(カレー炒め)にもスパイス調合の腕が光ります。典型的なタルカリでは、ホールのクミンやマスタードシードを油で弾けさせてからタマネギ・トマト・にんにく・生姜を炒め、ターメリックやコリアンダーパウダー、チリパウダー、塩少々で味付けします。


必要に応じてガラムマサラを最後に振りかけて香りを整えます。肉料理であればこれにクローブやシナモン、カルダモンなども加わり、より重厚な香りを出すこともあります。家庭や地域によって配合は様々ですが、「フェヌグリークでしっかり油に香りを移す」「ターメリックで下味と色付け」「クミンとコリアンダーでベースの風味形成」という流れは共通しており、ダルバートの各おかずに調和のとれたスパイスの風味が行き渡るよう工夫されています。


モモのスパイス使いと風味


モモ(Momo)はネパールで大人気の蒸し餃子で、チベット由来の料理がネパール風にアレンジされたものです。ひとくちサイズの薄皮餃子の中に、香味豊かな具材が詰まっています。モモの餡には鶏肉や水牛の挽肉に、たっぷりの刻み玉ねぎやネギ、ニンニク、ショウガ、そして各種スパイスが混ぜ込まれています。主なスパイスとしてはクミンパウダーやコリアンダーパウダー、ターメリック、ごく少量のガラムマサラなどが挙げられ、肉の旨味を引き立てつつもスパイスが前面に出すぎないようバランスが取られています。家庭や店によっては黒胡椒やチリを加えてピリッとさせたり、隠し味にティムール(山椒)をほんの少し混ぜて風味の奥行きを出したりもします。


モモに欠かせないのが一緒に供されるアチャール(タレ)です。トマトやゴマ、トウガラシなどで作るディップ状のソースで、このタレの美味しさがモモの味を左右すると言われます。モモ用のアチャールには、にんにく、ショウガ、焼いたトマト、青唐辛子、ゴマなどに加えて、やはりクミンやコリアンダー、塩、時にはティムールが用いられます。特にティムール入りの赤いチリソースはネパールらしい風味が強く、モモを頬張った後にほんのり舌が痺れる刺激がクセになると評判です。


「モモマサラ」と呼ばれる専用スパイスミックスを使うお店もあり、その中身はクミン、コリアンダー、胡椒、ガーリックパウダー、チリなどがブレンドされています。蒸したてのモモにこのスパイス香る特製ソースをたっぷりつけて食べれば、シンプルな材料の中に幾重もの風味が感じられるネパールならではの一品となります。モモはチベットや北インドにも似た料理がありますが、ネパールのモモはスパイスの使い方でオリジナリティを発揮していると言えるでしょう。


ネパールの人気料理モモ(蒸し餃子)。ジューシーな餡にクミンやコリアンダーなどのスパイスが練り込まれ、添えられた特製ソースにも唐辛子や山椒が効いています。


ネパールのカレーとインドカレーの違い


ネパール料理のカレー(タルカリやマサラ料理)はインドカレーと見た目は似ていますが、そのスパイス使いと風合いには明確な違いがあります。大きな違いの一つは、ネパールカレーは油分や乳製品が少なめで軽めの仕上がりであることです​。インドの北部ではギー(澄ましバター)やクリーム、ナッツペーストを使った濃厚でこってりしたグレービーが多いのに対し、ネパールではトマトや玉ねぎの水分を活かしたサラッとしたカレーが一般的です。結果としてネパールのカレーは重たさがなく、毎日でも食べられるマイルドでヘルシーな味わいになっています​。


また、スパイスブレンドの使い方にも違いがあります。インドでは地方ごとにガラムマサラやカレー粉のレシピがあり、多種多様なパウダースパイスを一度に投入して複雑な風味を出すことも珍しくありません。


一方ネパールでは、基本となるクミン、コリアンダー、ターメリック、チリなどを中心にシンプルな組み合わせで香りづけをする傾向があります​。ホールスパイスを炒めて香り油を作り、素材と共に煮込むというスタイルが多く、スパイスペースト(ミックススパイス)に頼りすぎないのも特徴です​。そのため、同じ「チキンカレー」でもインド式が濃厚でスパイスの層を感じる味わいなのに対し、ネパール式はさらっとしながらも素材の旨味と基本スパイスの香りが調和した素朴な味わいになります。


さらに、ネパール独自のハーブやスパイスが風味の違いを生みます。例えば、ネパールでは肉や豆のカレーにフェヌグリークを焦がして加える工程がよくあり、これが独特のほろ苦い香ばしさを生みます​。また、先述したティムール(山椒)はインドの一般的なカレーにはまず使いませんが、ネパールの一部のカレーやアチャールでは風味付けに用いられます​。爽やかな痺れが後味に残るこのスパイスが、ネパール料理ならではの個性を与えているのです。


まとめると、ネパールのカレーは「素材の味と基本スパイス+αの隠し味」、インドのカレーは「複雑に重ねたスパイスの競演」といった違いがあると言えるでしょう。どちらも魅力的ですが、ネパールカレーには素朴で滋味深い家庭の味わいがあり、日本人の口にも比較的馴染みやすいかもしれません。


ネパールのスパイスの購入方法と活用法


ネパールのスパイスに魅了され、「自宅でも使ってみたい!」という方も多いでしょう。ここでは、ネパール現地でのスパイスの買い方から、日本で入手する方法、さらに家庭でのスパイスブレンド活用法について紹介します。


ネパールの市場では、ターメリックやクミンシードなど様々なスパイスが袋や籠に山盛りにされ、量り売りで購入できます​。色とりどりのスパイスが並ぶ光景は圧巻で、市場に足を踏み入れるとスパイスの香りに包まれます。


現地ネパールでのスパイス購入


ネパールを訪れた際には、ぜひローカルのスパイス市場やバザールに足を運んでみましょう。首都カトマンズのアサン市場(Asan Bazaar)や郊外の市場では、スパイスや乾物の専門店が軒を連ねています​。店先にはターメリック、クミン、コリアンダーシード、フェヌグリーク、チリなど、お馴染みのスパイスが量り売りで並んでおり、好きな量(100gからでもOK)を袋に詰めてもらえます。日本ではあまり見かけないティムール(ネパール山椒)やジュワノ(アジョワンシード)、ヒマラヤ岩塩なども手に入るため、料理好きであれば宝探しのような楽しさがあります。


値段も日本に比べて非常に手頃で、例えばターメリックパウダーやクミンシードは100gあたり数十ルピー(数十円程度)と安価です。地元の人に交じってスパイスを買うのはハードルが高そうにも思えますが、量の指定は指で示したり簡単な英単語(half(半分)、1kgなど)で通じますし、店主も慣れているので安心です。香り高い新鮮なスパイスを入手できるのは現地ならでは。旅行の際には小分け容器や密閉袋を持参し、ぜひお土産にネパールのスパイスを購入してみてください。


日本でネパールスパイスを購入するには


日本でも、ネパールのスパイスは以前より格段に入手しやすくなっています。大都市圏を中心にインド・ネパール食材店が増えており、そうしたお店では本場のスパイスや食材が豊富に揃っています。例えば埼玉県志木市の「スパイスハウス志木」は、ネパールやインドのスパイス・食品が所狭しと並ぶ専門店で、店内の棚にはネパールのスパイスがずらりと並んでいます​。モモ用のスパイスミックスや現地メーカーのガラムマサラなども置いてあり、日本にいながらネパールの香りを手に入れることができます​。また、東京・新大久保や大阪・西成など各地のエスニック食材街にもネパール人経営の食材店があり、日本にいながらネパールスパイスを購入できます。


もし近くに店舗がない場合でも、通販サイトが強い味方です。楽天市場やアマゾンでは「ネパール スパイス」で検索すると多くの商品がヒットし、ガラムマサラやターメリックなどメジャーなものから、ティムールやジュワノのような珍しいスパイスまで取り扱いがあります​。実際、楽天市場では「ネパール スパイス」の検索結果が1000件以上もヒットするほどで​、需要の高まりに応じて品揃えも拡大しています。インド食材専門の通販(ティラキタやアンサーショップなど)でもネパール産のスパイスが購入可能です。最近ではネパール料理店が自社でスパイス販売を行うケースもあり、SNSや公式サイトで案内していることもあります。送料はかかるものの、重たいスパイスをまとめ買いしても自宅まで届けてもらえる利便性は魅力です。通販を活用すれば、日本全国どこにいてもネパールのスパイスを手に入れられるでしょう。


自宅で楽しむネパールスパイスの活用法


スパイスを手に入れたら、いよいよ自宅でネパール料理に挑戦です。初めは何をどう組み合わせれば良いか迷うかもしれませんが、基本のブレンドを覚えてしまえば応用が利きます。ネパールでも一般的なガラムマサラ(ミックススパイス)を自作してみるのもおすすめです。


ガラムマサラとはヒンディー語で「温めるスパイスの混合」という意味で、ブラックペッパー、シナモン、カルダモン、クローブ、クミン、コリアンダー、ベイリーフ(テジパタ)などを組み合わせたスパイスミックスを指します​。家庭や地域によって配合は様々ですが、例えば「クミン小さじ2:コリアンダー小さじ2:ブラックペッパー小さじ1:シナモンとカルダモン少々:クローブ少々」のように、自分の好みに合わせて割合を調整すると良いでしょう​。ホールのまま弱火で乾煎りしてから粉砕すると、一段と香り高いガラムマサラが完成します。


この自家製ガラムマサラを使えば、チキンカレーや豆カレー、炒め物などに本格的な風味を出すことができます。例えばチキンカレーなら、玉ねぎ・トマト・ニンニク・生姜を炒めてベースを作り、ターメリック、クミンパウダー、コリアンダーパウダー、チリパウダーで味付けした後、最後にひとふりガラムマサラを加えて仕上げます。これだけでネパールの家庭で食べるような素朴で風味豊かなカレーになるでしょう。


ダル(豆スープ)にも、仕上げにガラムマサラを少量入れると香りがぐっと引き立ちます。さらに、ティムールをお持ちならアチャールに活用しない手はありません。刻んだトマトに塩と唐辛子粉、潰したにんにく、そしてティムールを混ぜるだけで、簡単ながら現地さながらのトマト・アチャールができます。茹でたモヤシやキュウリに和えて和え物(サラダ)にするのもおすすめです。


このように、手に入れたスパイスを自宅で自由にブレンドしながらネパール料理に活用してみましょう。決まりきった配合はありませんので、香りを確かめながら自分好みの味を探すのも醍醐味です。慣れてきたらぜひオリジナルの「我が家のマサラ」を編み出してみてください。それこそ各家庭でスパイス調合が異なるネパールの家庭料理の精神を味わうことにもつながります。


ネパールのスパイスと健康効果


ネパールのスパイスはおいしさだけでなく、健康面でのメリットも数多く秘めています。インド発祥の伝統医学アーユルヴェーダや、チベット医学の影響を受けたネパールでは、「台所が一番の病院」という言葉があるほど日常的に食材やスパイスで体調を整える智慧が発達しました​。市場にはスパイスや薬草の専門店があり、必要な材料を揃えて自ら家庭で薬を調合する文化が根付いているのです​。ここでは代表的なネパールスパイスのもたらす健康効果と、伝統的な活用法を見てみましょう。


まず、消化促進や胃腸ケアの面でスパイスは大活躍します。クミンやコリアンダー、フェヌグリークは健胃作用があり、ネパールでは食事と共に摂ることで消化を助けています​。特にフェヌグリークは膨満感や消化不良を和らげ、食後の胃もたれを軽減してくれるとされています​。食物繊維も豊富なため腸の働きを整える効果も期待できます​。ネパールの豆料理(ダル)にフェヌグリークが使われるのも、豆類の消化をスムーズにする意味合いがあるのでしょう。


次に、抗炎症・抗酸化作用です。ターメリックは強力な抗酸化成分クルクミンを含み、体内の炎症を抑える効果があります​。関節痛の緩和や肝機能のサポートにも良いとされ、ネパールでも風邪をひいた時や体調を崩した時に「ターメリックミルク(ホットミルクにターメリックを溶かした飲み物)」を飲む習慣があります​。これは喉の痛みや咳を和らげ、免疫力を高めてくれる民間療法として親しまれています。また、シナモンやクローブなどガラムマサラに含まれるスパイス類も抗酸化作用が高く、血行促進や血糖値コントロールに有用とされています。


ビタミンやミネラル補給の点でもスパイスは侮れません。たとえば唐辛子(チリ)はビタミンA・Cの宝庫で、少量でも効率よくビタミンを摂取できます​。ビタミンCは抗酸化作用により疲労回復や美肌作りに寄与し、ビタミンAは粘膜や皮膚の健康維持に役立ちます。コリアンダーリーフには鉄分やカリウムが含まれ、利尿作用で体内の余分な水分や老廃物の排出を促します​。スパイスそのものは微量摂取ですが、毎日の積み重ねで不足しがちな栄養素を補える点は見逃せません。


そして忘れてはならないのが、伝統医学との結びつきです。ネパールではアーユルヴェーダの考え方が浸透しており、体質(ドーシャ)に合ったスパイスを取り入れて体調を整える習慣があります。例えば冷え性の人には身体を温めるショウガやブラックペッパー、ピッタ(熱性)が強い人には身体を冷ますコリアンダーやフェンネル、といった具合です。またチベット医学の流れも汲んでおり、高山地域では希少な薬草とスパイスをブレンドした丸薬やお茶も伝統的に用いられています。ネパールの人々にとって、スパイスは台所にある身近な自然の薬なのです。


実際の民間療法の例を挙げると、風邪の引き始めにネパールで飲まれるお茶があります。ターメリック、ショウガ、ティムール、岩塩を熱湯で煎じたスパイス茶で、これを温かいうちに飲むと体が芯から温まり、頭痛や寒気が和らぐと言います​。喉が痛い時にはクローブを噛んで殺菌し、消化不良の時にはアジョワン(ジャワナ)と塩をお湯で煎じて飲む、といった具合に用途別のスパイス活用法が伝えられています。まさに「家庭の台所が最初の病院」なのです。


まとめ


ネパールのスパイスは美味しさと同時に健康メリットももたらしてくれます。日々の料理に取り入れることで、食べながらにして体質改善や予防ケアが期待できるのは嬉しいポイントです。もちろんスパイスは薬ではありませんが、ネパールの人々のように上手に生活に取り入れることで、私たちも自然の力を享受することができるでしょう。


ネパールのスパイスは、その文化的背景や用途の広さ、そして独特の風味ゆえに世界中で愛されています。ネパールのスパイスについて知ることで、ネパール料理がより身近になり、自宅のキッチンでも新たな味に挑戦できるようになります。ぜひこの記事を参考に、ネパールのスパイス文化を日々の食卓で体験してみてください。香り豊かなスパイスは料理をおいしくするだけでなく、きっと食生活に彩りと健康をもたらしてくれることでしょう。

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